魚のアラ試食会「エコ・ガストロノミー」へ行ってきました!【未利用資源活用】

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第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
TET編集部 TET編集部

未利用資源を活用した料理の試食会「第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)」のレポートを3回に分けてお届けします。

この試食会は、ムーンショット型農林水産研究開発事業における、未利用生物資源を用いた新しい食料供給産業の実現の取り組みの一環です。

今回の第一弾では、試食会全体のイベントレポートをお届けします。
実施された経緯や参加者の紹介など、試食会の全体像が分かる内容となっていますので、ぜひご覧ください。

サンラポーむらくも
開催場所のホテル サンラポーむらくも(島根県松江市)

試食会について

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

日 時:令和6年12月8日(日)
場 所:サンラポーむらくも(島根県松江市)
参加者:研究者、学校・行政関係者、食品関係者、報道関係者など

県内の高校生が開発した新メニューも含まれており、調理に関心のある高校生も多数参加しました。
研究開発の状況や新メニューについて紹介し、試食しながら意見交換等を行います。

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 高橋教授
試食会の主催である、未利用生物資源を用いた新しい食料供給産業の実現 研究代表者 東京大学教授 高橋 伸一郎教授

「私たちは、ムーンショット型農林水産研究開発事業において、未利用生物資源を用いた新しい食料供給産業の実現に向けた研究開発を進めています。

サンラポーむらくもの照沼英則シェフに未利用生物資源を使ったレシピの開発を依頼し、2024年8月28日に開催した第1回の試食会では、魚のアラを使った料理等をご紹介しました。

今回の第2回目の試食会では、さらなる進化を試みた魚のアラを使った料理のほか、野菜(皮、芯、種などを含む)を使用した新メニューをご紹介します。

この機会に未利用生物資源に対する関心を高め、また、さまざまなご意見を頂戴することで、今後の研究開発の促進に繋げたいと思っています。」

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
会場の様子
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

料理人の皆さんによる未利用資源を活用した料理が会場に並びます。

主催者あいさつ 高橋伸一郎教授

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 高橋教授
高橋伸一郎教授

はじめに、主催者である高橋教授によるあいさつが行われます。

「今回、私共のプロジェクトで、2回目の試食会を開かせていただくこととなりました。

開催にあたり、たくさんの方々にご協力いただいております。
料理長である照沼シェフをはじめとした、料理スタッフの皆さま。
開催場所であるホテル、サンラポーむらくもの皆さま。
また、ムーンショットプログラムでサポートしていただいている、『生研支援センター』の皆さま。

今回お伝えしたいのは、プラネタリーヘルスフードという言葉です。

これは、地球と人類の健康を考える美味しい食品を作っていこうというプロジェクトで、
自分たちだけではなく、地球に負荷がかからない食品を作る試みです。

多くの人びとにとってこの試食会が、地球と人類のための食について考えるきっかけになったら幸いです。」

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

続いて、研究者としてどんな疑問を持ったのか、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部の教育研究プログラム「One Earth Guardians」の紹介、研究成果のサマリーとして、次の時代の栄養学として提案しているAI/DXを使った一人ひとりの体の健康状態に合わせてテイラーメイドな食べ物を食べていくアプローチの説明、食生活の変化で人類は救えるか、のテーマで、 人類が地球のためにできることについて考えるプレゼンテーションが行われました。

(参照:「ムーンショット目標5プロジェクト」高橋教授インタビュー

照沼総料理長によるメニュー紹介

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 照沼総料理長
照沼総料理長

次に、サンラポーむらくもの照沼英則シェフによるメニュー紹介が行われます。

「今回は、魚のアラを使った料理の試食会、第2回となっております。

魚の頭・骨・尻尾を圧力釜で3時間煮て、ムース状にしたものを使った料理を試食していただきます。
魚は主にスズキを使用していますが、タイやぶり、サーモンも入っています。
ぜひ、魚のアラを使った料理を堪能していただければ幸いです。

さらに今回、サンラポーむらくもでインターンをしている高校生料理人、石飛権樹君も参加していただいており、アラを使った渾身の料理を出しています。

邇摩高校では魚のアラを使ったクッキーやパンも出しているので、ぜひご試食いただけたらと思います。」

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 照沼総料理長

「アラを使った料理は今回で2回目です。1回目よりもさらにアラについて研究し、調理法も工夫し、さらにさまざまな種類の料理が完成しました。

島根県から発信し、全国・世界に通用するような料理を研究していきたいと思っています。
今回は、島根の新鮮な野菜やメロンの皮も料理に活用しました。できる限り捨てるものなく食品にしていきたいと思っています。」

県教育委員会教育長による乾杯のあいさつ

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

試食・意見交換開始のあいさつとして、県教育委員会教育長、野津建二さんが登壇されます。

「島根県でこのような試食会を行う意味とは、なんだと思いますか。

島根県は、人口構造が全国の20年くらい先に進んでいるんです。
高齢化が進んでいながら、高齢者の数が減っている。東京と比べると、40年ほど先の世界を見ていることになります。

高橋先生の言われた『未来』は、現実にもうここにあるんですね。

島根県が『Society X』(Society5.0を超える、地球のことを考える社会)のスタート、始まりの地になれば良いなと思っています。
そしてこの回が皆さんの意識・行動が変わる第一歩となり、未来に向けたスタートラインになることを願っています。」

試食・意見交換会スタート

お待ちかねの、試食会がスタートします。

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

魚のアラを中心に、未利用資源を活用した料理が並びます。

どの料理も、魚の臭みがなく、非常に美味しく食べられました! 詳しい料理のレポートは、第二弾の記事をご覧ください。

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
各テーブルを回り、意見を聞く高橋教授

参加企業紹介

試食会の合間に、参加企業の紹介が行われました。

株式会社Booon

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 株式会社Booon 代表取締役 橋爪海さん
株式会社Booon 代表取締役 橋爪海さんによるプレゼンテーション

株式会社Booon

2022年創業。食料残渣の昆虫資料化によるアップサイクルを目指す長崎大学発ベンチャー。
「地球に新しい経済資源を」というビジョンを掲げ、食品加工残渣や食品廃棄物を活用して人々の生活に必要な資源が生まれる仕組みをもたらす活動を行っている。

Booonさんの取り組みについてはこちらの記事(「昆虫(ミールワーム)を水産飼料にするメリットとは?株式会社Booonの事業紹介」)でも紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

株式会社MARS Company

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 株式会社MARS Company 代表取締役 大野正樹さん
株式会社MARS Company 代表取締役 大野正樹さんによるプレゼンテーション

株式会社MARS Company

世界が注目する独自の長期冷蔵保存技術で切り拓く、新たなコールドチェーン。
非熱エネルギーをさまざまな角度から研究。食材の輸送や冷蔵保存において、食材を高鮮度のまま長時間保存する独自の冷凍・冷蔵・製氷技術を有している。
鮮度保持冷蔵庫「Kuraban(蔵番)」や海水製氷装置「sea snow」、過冷却冷蔵庫「Tokyo Snowman」等を製造・販売するビジネスを通して、日本の農業や水産業の活性化に貢献する取り組みを行っている。

今回の試食会で使った魚のアラも、MARS Companyさんの「Kuraban(蔵番)」に入れて保存しています。

株式会社雲南ステージ

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜) 株式会社雲南ステージ 代表取締役 松本公一さん
株式会社雲南ステージ 代表取締役 松本公一さんによるプレゼンテーション

株式会社雲南ステージ

野菜スープを核とする食品の製造・販売。有機的農業の推進を核とした地域農業・農村の再生を行っています。
企業理念は「『野菜スープの製造・販売』を結節点に『持続可能な農業・農村の再構築』を!」
農業・農村が抱える高齢化や後継者不足、農家所得低迷などの問題を解決すべく、解決策の一つとして「野菜スープ」製造・販売を起業した。

試食会参加者・関係者インタビュー

試食会中に、参加者へのインタビューが実施されました。
試食会に関わった皆さんへのインタビューの詳細は、ぜひ第三弾をご覧ください。

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
松江農林高校の高校生料理人、石飛権樹さん
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
邇摩高校の生徒
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
邇摩高校の生徒・先生
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
邇摩高校 校長先生
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)
株式会社北國 代表取締役 北國恵久さん

株式会社北國

大正11年に創業した、醤油の製造会社。
平成20年に、代表である三代目の北國恵久さんが、8年間勤務した鳥取県米子市の老舗 【坂口合名会社】 の『かぎさ』ブランドを譲り受ける事となり、それに伴い第2工場を新設、社名を有限会社『北國醤油店』から 『株式会社 北國』に変更し平成21年4月より 『かぎさ・ホッコク』兄弟ブランドの製造工場として新しくスタート。
『醤油は女房役』を基本理念とし、良い原料を使い良い醤油を造る。 魚を美味しく食べられる醤油をつくる。という先代から受け継いだ考え方を大切にしている。

閉会

第2回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 (テーマ:魚のアラと野菜)

生研支援センター研究リーダー 大下友子さんによる閉会の言葉

「今回はこのような試食会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。

私は高橋教授のムーンショットプロジェクトの担当リーダーをしております。
我々の機関では、指揮管理、予算の配分や研究の進捗状況の管理などを行っています。
高橋教授には大変お世話になっており、楽しく仕事をさせていただいております。

本日はさまざまな未利用資源、アラを活用した料理を非常に美味しく頂かせていただきました。料理を担当された方々に、改めて感謝申し上げます。

私にも孫がおりますので、その子達が大きくなるときに、なるべく良い世の中であって欲しいと切に願っております。高橋先生のプロジェクトに賛同しながら、今後も取り組みをしていけたらと思っております。
改めまして、本日はありがとうございました。」

こうして試食会は無事終了。
参加者の皆さんは美味しく魚のアラ料理をいただき、料理人の方々や高橋教授、研究者や参加企業の方々との意見交流を楽しんでおりました。

第二弾では、気になる魚のアラ料理の詳細や、気になるお味について詳しくレポートします。ぜひお楽しみに!

(取材日:2024年12月8日、取材協力:サンラポーむらくも