食の「循環」をデザインする:持続可能な食卓のために私たちができること

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食の循環をデザインする
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なぜ食の循環が未来の食卓に不可欠なのか

私たちが毎日当たり前のように口にしている食べ物。その食べ物がどこで生まれ、どのような道をたどって食卓に届き、最後はどこへ行くのか。こうした一連の流れを「食の循環」と呼びます。

しかし、今、この循環がうまく回らなくなっています。最大の原因は、今の社会の仕組みが「大量生産・大量消費・大量廃棄」という、「一方通行」の流れになってしまっていることにあります。

国連食糧農業機関(FAO)によると、世界で生産された食料の約3分の1(年間約13億トン)は、誰の口にも入ることなく廃棄されています。

その一方で、世界の人口は増え続け、2050年には97億人に達する見込みです。「限りある食料を大量に捨てながら、増え続ける人口を養う」というこれまでのやり方が、すでに限界を迎えていることは明らかです。

未来の食卓を守るためには、この一方通行の流れを変え、資源を無駄なく活かす本当の意味での「循環」を取り戻さなければなりません。

この記事では、食のライフサイクルを①生産・加工②流通・消費③廃棄・再生の3つの段階に分け、それぞれの課題と、私たちにできる具体的なアクションをお伝えします。

生産・加工段階 – 目に見えない資源の消費と「規格」の壁

食材が生まれる現場では、膨大な水や土地などの資源が使われる一方で、品質には問題がないのに「基準」に合わないという理由で多くの食材が失われています

1. 食べ物を作るために必要な「水」と「肥料」

私たちが口にする食べ物の背景には、目に見えない大量の水が使われています。例えば、牛肉1kgを生産するには、約2万リットルの水が必要です(※環境省推計)。これには、牛が食べる穀物を育てるために必要な水も含まれています。このように、私たちは、食べ物を消費している時、その食べ物を生産するために必要な大量の水も間接的に消費しているのです。こうした考え方を「バーチャルウォーター(仮想水)」と呼びます。

仮想水とは

また、生産を急ぐあまりの過剰な施肥などは土壌への負担となり、すでに世界の農地の約33%が劣化しているという報告もあります。

また、土壌が養分過多になると、

  • 地下水・河川の汚染
  • 土壌の養分バランス等の悪化
  • 病害虫・雑草の発生

など様々な環境問題が生じるとも言われています。

参考:

2. 「見た目」の基準で消えていく野菜たち

味や栄養は市販品と同じなのに、サイズや形が基準に合わないだけで「規格外」として扱われる食材があります。農林水産省の調査によると、収穫された野菜のうち13%前後(※農林水産省推計)が、市場に出荷されずに廃棄されたり自家消費されたりしています。

規格外野菜の量

せっかく資源を投じて育てた食材を無駄にしないため、最近では不揃いな野菜をスムージーやスープなどの加工品原料として活用する「アップサイクル」の取り組みが広がってきています。

参考:

流通・消費段階 —— 日本の食品ロスの半分は「家」から

生産された食材が加工され、スーパーやコンビニの棚に並び、私たちの口に入るまでの流通・消費の段階。ここにも、多くの「もったいない」が隠れています。

1. 運ぶ距離が長いほど環境に負担がかかる

一つは、輸送に伴う環境負荷です。遠くの国や地域から食材を運ぶには、トラックや船、飛行機が使われ、その分だけ二酸化炭素が排出されます。いわゆるフードマイレージという概念です。日本の食料自給率(カロリーベース)は約38%と低く、多くを輸入に頼っているため、輸送による環境負荷が大きいのが特徴です。なんと日本のフードマイレージは韓国やアメリカの約3倍、イギリスやドイツの約4倍、フランスの約9倍にも達するとも言われています(環境省推計)。

フードマイレージ

参考:

2. 私たちが毎日捨てている量

また、日本の食品ロスは、年間で約464万トン(令和5年度推計)。これは、日本人1人あたりが「おにぎり1個分(103g)のごはん」の量を毎日捨てている場合と近い量です。そしてなんと、そのうち約半分にあたる233万トンが家庭から発生しています。主な理由には「期限切れによる廃棄(直接廃棄)」、「食べ残し」、「調理時の過剰除去」などが挙げられます。日々の一人ひとりの家庭での意識を変えることで食品ロス問題の解決がグッと近づくとも言うことができますね。

日本の食品ロス

参考:

廃棄・再生段階 – 「ゴミ」を「資源」に

食の循環の最終段階は、単なる「ゴミの後始末」ではありません。実はここが、次の新しいサイクルを生み出すための「リスタート地点」となります。

1. 生ゴミを燃やすのは大変

家庭で料理をすれば野菜の端材(皮やヘタ)が出ますし、どうしても食べきれず残ってしまうこともあります。また、お店では十分に食べられるのに売れ残ってしまう「食品ロス」も発生しています。そして、このような食品廃棄物(生ゴミ)の中身を詳しく見ると、実は重さの約80%以上が「水分」でできているのです。

水分をたっぷり含んだゴミを燃やすことは、いわば「水を燃やそうとしている」ようなものです。これには、想像以上に大きなエネルギーが必要になります。

  • エネルギーの浪費: 焼却炉の燃料が「ゴミを燃やすため」ではなく、まず「水分を蒸発させるため」に費やされてしまいます。
  • CO2排出の増加: 余計な燃料を使う分、排出される二酸化炭素(CO2)も増え、地球温暖化を加速させる要因になります。
  • 温室効果ガスへの影響: 世界の温室効果ガス排出量の約8〜10%は、こうした食品ロスに関連しているという報告もあります。

しかし、各家庭で、ゴミを出す前に「ぎゅっと絞って水気を切る」だけでも、燃やす際のエネルギーを節約し、環境への負荷をぐっと減らすことができます。

生ごみを燃やすのは大変

2. 捨てずに「活かす」

また、最近では食品廃棄物を単なるゴミではなく「資源」として再活用する仕組みが広がっています。

  • 堆肥化(コンポスト): 微生物の力で分解して肥料に変え、再び農地へ戻して次の作物を育てます。
  • バイオガス発電: 生ゴミを発酵させてメタンガスを発生させ、電気や熱などのエネルギーとして再利用します。
  • アップサイクル: 食べられない部位(野菜の皮や種など)を新しい製品の材料(例:りんごの皮を使ったアップルレザー)にしたりする活用法も注目されています。また、コーヒーを淹れた後の湿ったコーヒーかすも、乾燥して消臭剤として使うなどすれば、食品の価値を最大限使いつつ、「食品の寿命」をより長くできますね。

私たちが今日捨てようとしているものは、実はまだ価値が潜んでいる「資源」かもしれません。ちょっとした視点の転換が「食の循環」を進める原動力になるのです。

食品廃棄物を資源として活かす

参考:

循環する食のあり方を創るために:私たちができること

難しい知識がなくても、日々の選択で食の循環は変えられます。

  1. 「地元の旬の食材」を選んでみる: 輸送エネルギーを抑え、かつ、地域の農家を応援できます。
  2. 「手前取り」を意識する: スーパーで期限が近いものから買うことで、お店の廃棄を減らせます。
  3. 買い物前に冷蔵庫をチェック: 買いすぎを防ぐのが、一番の食品ロス対策です。
  4. ゴミを出す前に「ひと絞り」: 資源として再利用しやすい状態にすることができ、燃やす時のエネルギーも節約できます。
  5. 循環を応援する商品を買う: 規格外品を使ったお菓子や、「食の循環」づくりに取り組む企業の製品を選んでみましょう。

これらのアクションは、どれも自分一人で始められるものです。そして、一人ひとりの意識が変われば、社会全体のシステムも変化していきます。できることから少しずつ始めていきませんか?

食の未来は、私たちの選択で創られる

「食の循環」を考えることは、私たちの毎日の暮らしと地球がどのようにつながっているかを知ることでもあります。これまで見てきたように、生産・流通・廃棄のどの段階にも課題はありますが、それらは日々のちょっとした意識で変えていけるものばかりです。

例えば、「必要な分だけ買う」「ゴミを出す前に水気を切る」といった日常の選択は、単なる節約やマナーではありません。実は、無駄なエネルギー消費を抑え、大切な資源を次のサイクルへとつなげるための、「社会への貢献」にもなるのです。

私たちは、ただ食べ物を受け取るだけの存在ではなく、この循環の流れを自らの手で整えていく「デザイナー」でもあります。まずは今日の買い物やキッチンでのひと工夫から、自分にできることを一つずつ始めてみませんか。

(文・構成・画像 TET学生編集部 mm )