タイのコンビニ弁当にも広がる健康志向──スーパーフード米「ライスベリー」・健康弁当シリーズを食べてみた

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タイ・セブンイレブン 健康弁当シリーズ
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以前、ムーンショット目標5のプロジェクトを取り上げた際、これからの食生活のキーワードとして「量から質へ」という考え方を紹介しました。好きなものをとにかくたくさん食べるのではなく、自分の健康維持に必要な分を、栄養の質を意識して食べる。そうした食事のあり方が、健康寿命を延ばすためにも、地球への負荷を減らすためにも重要になってきています。

参考:地球を考える食卓「ムーンショット目標5プロジェクトの狙い「食生活の変化で人類は救えるか?」【高橋伸一郎教授インタビューvol.3】」

自分の体に必要なものを選んで食べるという意識は、日本でも少しずつ身近になっているのではないでしょうか。糖質・脂質を抑えた商品やタンパク質が豊富な商品など、健康を意識した食品をコンビニやスーパーで見かける機会も増えました。

そして今回注目したいのは、同様の傾向が東南アジアのタイでも見られる、というお話です。甘いスイーツや濃い味付けの料理のイメージが強いタイの食文化ですが、近年は健康志向が高まっており、その影響がコンビニ(セブンイレブン)の弁当にまで及んでいます。

今回は、タイで販売されている健康志向の弁当シリーズを実際に食べ比べながら、その背景にあるタイ社会の変化と、鍵となるスーパーフード米「ライスベリー」についてご紹介します!

1. なぜ今、タイで「健康志向」なのか

この「健康志向の高まり」の動きは、単なる流行というわけではなく、背景には、タイが抱える切実な健康課題があります。

タイでは経済成長や食生活の変化にともなって、肥満や糖尿病が大きな社会課題になってきました。肥満は近年はっきりと増えてきています。2022年の調査では、タイの成人の過体重・肥満の割合は47.8%に達し、2016年の34.7%から上昇。マレーシアに次いでASEANで2番目に高い割合となりました。

参考:Thai PBS World「Fighting overweight and obesity」

また、糖尿病をはじめとする生活習慣病の広がりも深刻です。2型糖尿病や心臓病、高血圧、脳卒中といった非感染性疾患(NCDs)は、タイで年間40万人の命を奪い、全死亡の74%を占めているとされます。とりわけ糖尿病は増加が続いています。20〜79歳のタイの成人で糖尿病を抱える人は、2011年の約400万人(有病率7.5%)から、2024年には約640万人(同10.2%)へと着実に増加しつつあるようです。

参考:

そしてその背景の一つとして、砂糖のとりすぎが指摘されてきました。世界保健機関(WHO)は成人の1日の砂糖摂取を小さじ6杯分に抑えるよう推奨していますが、タイ人の2026年時点での摂取量はその3倍以上にあたる21杯分。こうした状況に危機感を持ったタイ政府は、2017年から飲料への砂糖税を導入するなど、対策に乗り出しています。

砂糖の摂りすぎ

一方で、消費者の意識も少しずつ変わってきているようです。食の「健康」や「安全」への関心が高まり、中間所得層以上を中心に食生活が変化しつつあるといいます。「健康を意識して安全な食品を選ぶようになった」「料理やお菓子を買うときは低カロリーのものを心がけている」といった声も聞かれ、日々の食品選びにも変化が表れています。

そして、こうしたニーズに応えるように、食品メーカーやコンビニ各社も健康的な調理済み食品の開発を進めています。「安ければ良い」という時代から、少し割高でも安心して食べられる商品が選ばれる時代へと、移りつつあるのかもしれません

参考:

2. コンビニの弁当棚に表れた変化

その変化がいちばんわかりやすく表れているのが、タイ全土に1万数千店を展開するセブンイレブンの弁当棚です。

ガパオライスやパッタイ、グリーンカレーといった、いわゆる定番のタイ料理のお弁当が並ぶ棚の一角に、カロリーや栄養バランスを強調した健康弁当シリーズも置かれるようになってきました。この健康シリーズは容器の色が緑色で統一されていて、赤い容器が中心の通常のお弁当とひと目で見分けられるようになっています。

セブンイレブン 弁当売り場

パッケージをよく見ると、健康志向をアピールする工夫があちこちに見つかります。

健康弁当シリーズ パッケージ
  • 大きく表示された総カロリー(例: 450kcal)
  • Source of Protein(タンパク質源)」のアイコン
  • Low Saturated Fat(飽和脂肪酸ひかえめ)」の表示
  • 「化学調味料(MSG)不使用」「キャノーラ油使用」「保存料不使用」といった訴求
  • 主食に白米ではなく、ライスベリーやジャスミン・レッドカーゴ米(赤い胚芽の残る玄米系のお米)といった雑穀・全粒系のお米を採用

カロリーやタンパク質量、健康効果をはっきり前面に打ち出したこの弁当シリーズは、健康を意識する人にとって選びやすい存在になっているのではないでしょうか。そして、健康的な選択肢が、誰もが立ち寄るコンビニで、しかも日常価格(約300円)で手に入る。この手軽さも、タイの健康志向を後押しする要因のひとつになっていそうです。

3. 主役はタイ生まれのスーパーフード「ライスベリー」

この健康弁当シリーズで主食に使われているお米は、ライスベリーとジャスミン・レッドカーゴ米。いずれも白米より栄養価が高く、GI値が低めの雑穀・全粒系のお米です。そのうち特に特徴的なのが、タイが世界に誇るスーパーフード米「ライスベリー」です。せっかくなので、このお米について少し詳しく見ておきましょう。

ライスベリー

写真元:Research Outresearch「Riceberry rice: Thailand’s antioxidant-packed nutraceutical and super food!」

生い立ち

ライスベリーは2003年に、タイ国立の農学を専門とする大学「カセサート大学」の研究機関「ライスサイエンスセンター」で開発された、比較的新しい品種です。タイの最高級品種である「ジャスミン米」と「黒米」を自然交配させて生まれた品種のため、ジャスミン米の味と香り、黒米の高い栄養価という、両者のいいところを受け継いでいます

今まさに、タイでも急激に増えてきた「食生活に関連する慢性疾患(糖尿病など)を予防する救世主」として注目されています。

栄養と特徴

ライスベリー最大の特徴は、なんといってもその深い紫色。この紫色は抗酸化作用をもつポリフェノールによるものです。また、ライスベリーは玄米なので食物繊維も豊富であり、そのほか亜鉛、鉄、ビタミンE、ビタミンB1、βカロチン、葉酸、オメガ3など、多くの栄養素を含んでいます。

さらに嬉しいのが、血糖値の上がりにくさです。ライスベリーは白米にくらべてGI値(食後血糖値の上昇度を示す指数)が低いため、糖尿病や肥満が課題のタイでとくに注目されています。

しかも玄米なのに食べやすいのもポイントです。食物繊維を豊富に含む玄米でありながら、パサつかずにふっくらした食感と、ジャスミンライスから受け継いだ良い香りを楽しめるのが、ライスベリーの魅力です。

ライスベリー セブンイレブン

参考:

いまではタイでもライスベリーを扱う飲食店が増え、身近な健康食品として認知度が上がっていて、現地のスーパーやコンビニならたいていどこでも手に入るようになっています。コンビニ弁当に使われているのも、こうした広がりの延長線上にあるといえそうです。

4. 実食レポート:健康弁当を食べ比べてみた

ここからは、実際に買って食べてみた“食レポ”です。2026年7月時点で売られている全3種を食べてみました。

① ライスベリー×ジャスミン米 鶏むね肉のラープ弁当(450kcal)

ライスベリー×ジャスミン米 鶏むね肉のラープ弁当

「Riceberry Mixed Jasmine Rice with Spicy Chicken Breast Salad」。ライスベリーとジャスミン米をブレンドしたご飯に、鶏むね肉のラープ(タイ風スパイシーサラダ)を合わせた一品です。

パッケージには「Source of Protein」「Low Saturated Fat」の表示に加え、450kcal、そして「化学調味料不使用・キャノーラ油使用・保存料不使用」の訴求が並びます。

ライスベリー×ジャスミン米 鶏むね肉のラープ弁当

中身は鶏ひき肉のラープ、紫色のライスベリーとジャスミン米のMIXご飯、そして付け合わせのインゲン豆とキャベツです。まず主食のライスベリー×ジャスミン米が、もちもち・プチプチした食感で楽しく、香ばしい香りも印象的です。ライスベリー単体だと玄米っぽさが強めとのことですが、ジャスミン米とのミックスなので、香りも食感もちょうどよく、とても食べやすいです。

ラープは、ライムの爽やかな風味とパクチーの香りがアクセントになっていて、さっぱりと食べられます。この爽やかさと辛さのおかげで、鶏むね肉でも最後まで飽きずに食べ進められました。「健康的だから我慢して食べる」のではなく、普通に美味しくて満足感があるのが好印象でした。

栄養成分(280g/箱あたり)は次のとおりです。

項目含有量1日基準比
エネルギー450 kcal23%
タンパク質28 g
脂質7 g11%
 うち飽和脂肪酸1.5 g8%
炭水化物69 g22%
 うち糖類5 g
ナトリウム770 mg38%
カリウム510 mg15%

(※パッケージ裏面の栄養情報より。1日基準比の数値はタイ人の1日の推奨摂取量2,000kcalを基準とした割合)

タンパク質は28gとしっかりで、糖類は5g。旨辛でさっぱりしたラープの味わいは、こうしたバランスの上に成り立っています。ただ、ナトリウムは1日の38%とやや高め。旨辛の味付けの弁当は塩分も上がりやすいので、気になる人は覚えておくとよさそうです。

② ジャスミン・レッドカーゴ米 鶏むね肉のガパオ弁当(460kcal)

ライスベリー×ジャスミン米 鶏むね肉のラープ弁当

「Jasmine Red Cargo Rice with Stir-Fried Basil Chicken Breast」。赤い胚芽が残る玄米系の「レッドカーゴ米」に、鶏むね肉のガパオ(バジル炒め)を合わせた、タイの定番料理のヘルシー版です。

中身はバジルと唐辛子の効いた鶏むね肉のガパオ、レッドカーゴ米、そして人参とブロッコリーの付け合わせです。

ジャスミン・レッドカーゴ米 鶏むね肉のガパオ弁当

こちらもタンパク質重視の構成です。ガパオといえば油多めのイメージですが、この弁当は油控えめで、かつ鶏肉を使っているため、罪悪感なく食べられます。味わいは本場らしい辛めの味付けで、クオリティの高さに驚かされます。レッドカーゴ米も、味はいわゆる”玄米”で、白米よりも歯ごたえがあり、香ばしい香りと優しい甘みが感じられます。

栄養成分(270g/箱あたり)は次のとおりです。

項目含有量1日基準比
エネルギー460 kcal23%
タンパク質28 g
脂質9 g14%
 うち飽和脂肪酸1.5 g8%
炭水化物66 g22%
 うち糖類4 g
ナトリウム690 mg34%
カリウム390 mg11%

(※パッケージ裏面の栄養情報より。1日基準比の数値はタイ人の1日の推奨摂取量2,000kcalを基準とした割合)

タイ料理は砂糖を効かせた甘辛い味付けが定番ですが、この弁当は糖類がわずか4g。タンパク質も28gしっかり確保されています。旨辛で満足感がありつつも、栄養バランスに配慮されていることが数字からもうかがえます。

③ ジャスミン・レッドカーゴ米 グリルチキン ジェオソース弁当(380kcal)

ジャスミン・レッドカーゴ米 グリルチキン ジェオソース弁当(380kcal)

「Steamed Jasmine Red Cargo Rice with Grilled Chicken Breast and Thai Spicy Sauce」。焼いた鶏むね肉に、タイ東北部発祥の甘辛いソース「ジェオ」を添えたお弁当で、カロリーはシリーズで最も低い380kcal。

ジャスミン・レッドカーゴ米 グリルチキン ジェオソース弁当(380kcal)

しっとり焼き上げた鶏むね肉、レッドカーゴ米、人参やブロッコリーといった野菜がバランスよく配置されています。

栄養成分表示(255g/箱あたり)は次のとおりです。

項目含有量1日基準比
エネルギー380 kcal19%
タンパク質25 g
脂質5 g8%
 うち飽和脂肪酸1 g5%
炭水化物59 g20%
 うち糖類7 g11%
食物繊維由来の低GI雑穀使用
ナトリウム970 mg48%
カリウム420 mg12%

(※パッケージ裏面の栄養情報より。数値はタイ人の1日の推奨摂取量2,000kcalを基準とした割合)

3種の中でもっとも低カロリーの380kcalながら、タンパク質は25g、脂質はわずか5g。“高タンパク・低脂質”のお手本のような設計です。一方でナトリウムは970mg(1日の48%)とシリーズで最も高いので、塩分が気になる方は要注意です。

5. まとめ

ムーンショット目標5の記事で紹介した「量から質へ」、つまり自分の健康維持に必要な分を、栄養の質を意識して食べるという考え方。こうした食を量ではなく質でとらえ直そうとする動きは、日本だけでなく、それぞれの国・食文化の中で同じように育ちつつあるようです。

タイを訪れる機会があれば、今回紹介したような健康弁当や、タイならではのスーパーフード米『ライスベリー』を、ぜひ味わってみてください!

※本記事の栄養・健康効果に関する記述は一般的な情報であり、特定の疾病の予防・治療を保証するものではありません。持病のある方は医師にご相談ください。栄養数値は撮影した商品パッケージの表示に基づきます。

(文・画像・構成 TET学生編集部)