第3回(2025年7月開催)に引き続き、2026年7月に開催された未利用資源を活用した料理の評価会「第4回 エコ・ガストロノミー 〜地球とヒトをつなぐ食〜 テーマ:魚のアラと野菜 – 科学と料理の融合による未来食への挑戦」のレポートを3回に分けてお届けします。
この評価会は、ムーンショット型農林水産研究開発事業(ムーンショット目標5)における、未利用生物資源を用いた新しい食料供給産業の実現の取り組みの一環です。
第二弾となる今回は、評価会で実際に提供された全23品の料理を、シェフのコメントとともにご紹介します。評価会の概要については第一弾をご覧ください。

魚のアラ(頭・骨・皮など)や、野菜の皮・芯、規格外野菜といった、これまで十分に活用されてこなかった素材が、シェフたちの手でどんな料理に生まれ変わったのか。ぜひご覧ください。
目次
未利用資源を活用した料理23品の紹介

【照沼シェフ】
- アラ入りかまぼこ(3種)のおでん
- アラ入りかりんとう

- 玉ねぎ(皮)のゼリー
- 玉ねぎ(皮)入りフォカッチャと玉ねぎ(皮)入りジャム
- 野菜甘酢漬け

玉ねぎを使った料理には、(島根県)大田市の玉ねぎを使っています。
新玉ねぎの皮を大量に干しておき、煮出した液体でゼリーをつくりました。煮出したあとの皮は裏ごししてピューレ状にし、ジャムに。さらに皮を乾燥させ、粉末にしてフォカッチャに使いました。一つの素材を、余さず何通りにも使い分けています。
【渡部シェフ】
- 冷製薩摩芋と新玉ねぎのクリームスープ
- 冷製トマトと新玉ねぎのクリームスープ
- 玉ねぎの皮で出汁を取ったオニオンスープ
- 薩摩芋のレモン煮

JAでは規格外とされる、形が不ぞろいな野菜を使った料理を作りました。薩摩芋のレモン煮などを見ていただくとわかるように、でこぼこのさつまいもがありますが、味は通常のものと変わりません。
オニオンスープは、大田市の新玉ねぎを甘くなるまで炒め、玉ねぎの皮で取った出汁(ブイヨン)を合わせています。ほんのり皮の苦味も感じられると思います。
- アラ入り白身魚のパンケーキ 新玉ねぎとトマトのソース
- アラ入りシュリンプカレー

白身魚のパンケーキは、すり身にアラのペーストを混ぜ込んでいます。大田市からいただいたトマトと玉ねぎでソースをつくり、添えました。
カレーは、玉ねぎをベースに、ガラムマサラなど複数の香辛料を組み合わせました。魚のアラのペーストも加え、とろみとコクを出しています。
【廣戸シェフ】
- アラ入り振りかけ
- アラ入り3色出汁巻き卵

ふりかけは、鯛のアラのペーストを大鍋に入れ、酒を加えてほぐしながら、弱火で4時間ほどかけて水分を飛ばし、粉末状にしました。おかかは、そばだしを取ったあとの鰹節を捨てずに活用しています。ゆで卵は黄身と白身を別々に裏ごしし、さらに炒ってさらさらに。これらを合わせてふりかけにしました。
卵焼きは、魚のアラのペーストとパウダー、野菜のペーストを使い、三色に仕上げています。
【殿川シェフ】
- アラ味噌の焼きおにぎり
- 米茄子のアラ味噌田楽
- 島根和牛のローストビーフ アラ味噌ソース

魚のアラを使った味噌を、白味噌と赤味噌の2種類でつくりました。アラのペーストに酒を加え、一度火にかけて滑らかにしたあと、味噌と合わせ、みりんや砂糖などで練り上げています。
白味噌ベースは焼きおにぎりに、赤味噌ベースは田楽やローストビーフのソースに使いました。ローストビーフのソースは、赤味噌を和風だしで少し伸ばしています。
味噌は、おにぎりや茄子だけでなく、いろいろな食材に使えると思い、作ってみました。
【北村シェフ】
- アラのメーテルドテルバター風味 ガーリックトースト
- アラアヒージョ

ガーリックトーストには魚のアラを使ったハーブバターを使用しています。通常は牛肉のステーキなどにのせるハーブバターにアラを加え、魚のアラのうま味を生かした形にしました。魚のソテーにのせたり、ソースのコク出しに使ったりもできます。
アラの風味と食感を、アンチョビペーストのように生かせるのではないかと考え、アラアヒージョにアレンジしました。アラを魚醤、にんにく、鷹の爪などと合わせています。パスタの隠し味など、さまざまな用途があると思います。
【福田シェフ】
- アラ入り芋もち
- アラと里芋の団子

アラ入り芋もちは、マッシュしたじゃがいもにアラと片栗粉を加え、もちもちした食感に仕上げました。たれをかけて召し上がってください。
もう一品は、アラのペーストと里芋を混ぜ、団子状に丸めて揚げた料理です。あんをかけてお楽しみください。
【前田シェフ】
- アラ入りお魚のマンテカート バケット添え
- アラ入りお魚のラグー スパゲッティ

私はイタリア料理を専門にしています。
一品目は、主に鯛やスズキなど白身魚のアラを焼き、オリーブオイル、少量の生クリーム、にんにく、パセリなどを合わせた料理です。ベネチアの郷土料理「マンテカート」を参考にしました。
パスタは、魚のアラを素焼きにして身をほぐし、できるだけ水を加えず、魚のうま味を生かしてソースをつくりました。南イタリア、ナポリ周辺の味付けを参考にしています。
【エンフィレール出雲運営 株式会社CREZAS 代表取締役 大田 武士さん】
- 規格外トマトのノンアルコールブラッディマリー ノドグロ塩のスノースタイル

会場のエンフィレール出雲を運営する株式会社CREZAS代表取締役で、自身もバーを約20年営む大田 武士さんは、規格外トマトを使ったノンアルコールドリンクを提供しました。
規格外のトマトで何かできないかとご相談をいただき、こちらをご用意しました。
裏ごしもせず、そのままの味を楽しんでいただきたいと思い、濃度のかなり高いトマトジュースにしています。グラスの縁にはノドグロ塩をつけ、スノースタイルに仕上げました。塩と一緒に口に含み、料理と合わせて味わっていただくと、トマト、のどぐろ、塩の味わいが互いに引き立つように設計しています。
今後は、規格外のセロリなども活用したいと考えています。アメリカには「クラマト」という、トマトジュースにハマグリのだしやセロリ、香辛料などを合わせた飲料があります。日本でも、魚介のだしを使った「だしトマトジュース」のようなものができれば、料理にもドリンクにも使え、食卓の幅が広がると思います。
全23品を「評価」する
こうして、未利用資源を活用した料理、全23品が出そろいました。

そして今回のエコ・ガストロノミーは、ただ料理を味わう会ではありません。参加者の皆さんには、料理を楽しみながら「商品化適性評価」に協力していただきます。
評価にあたっては、東京大学大学院農学生命科学研究科の小南 友里助教から、評価表の記入方法について説明がありました。どれもおいしい料理の中から、「これはぜひ商品化するとよいのではないか」と思うものを選んでいく。参加者はそんな視点で、一品一品と向き合っていきます。
続く第三弾では、研究者・シェフ・専門家によるパネルディスカッションの様子をお届けします。アラの成分分析から商品化の課題、食と健康をめぐる議論まで、たっぷりとご紹介します。お楽しみに!
(取材日:2026年7月13日、取材協力:エンフィレール出雲)